2011年3月7日月曜日

不当解雇(リストラ)の裁判例

今回は、不当解雇(リストラ)について判断している裁判例を紹介します(つづき)。 

(5)この点に関し、相手方は、定年退職に伴う退職手当請求権が、会社更生法127条2号にいう「更生手続開始後の更生会社の事業の経営に関する費用の請求権」には当たらず、全額が共益債権として保護されるわけではないとすると、定年退職が予定されている従業員の勤労意欲を著しく減退させてしまい、およそ会社再建のための誠実な業務執行を期待し得なくなってしまうと主張する。
 しかし、労働者保護という政策的見地から、前記1のとおり、更生計画認可決定前に退職した当該株式会社の使用人の退職手当の請求権は、退職前6月間の給料の総額に相当する額又はその退職手当の額の3分の1に相当する額のいずれか多い額を共益債権とすると定められているところ(会社更生法130条2項)、給料総額の基準のみならず、退職手当総額の3分の1という基準を設けたのは、在職年数との関係で、退職手当が高額となる労働者を保護する趣旨であると解される。
 そして、会社更生法130条2項で共益債権とされる範囲を超える部分は、優先的更生債権となり、実体法の優先順位に従った保護の対象となるのであって、同法は、以上のような形で退職手当請求権を保護することにより、労働者を保護しようとしているものと解される。
 これを、本件についてみても、抗告人が本年8月31日に提出した更生計画案において、本件で問題となっている退職手当請求権を含む労働債権については、計画認可決定日から3か月以内に一括弁済することとして、その保護が図られることになっている。(乙5)
 一方、更生手続開始決定前に定年を迎えて退職した従業員が、退職手当を受領する前に更生手続が開始した場合には、その従業員の退職手当請求権の保護は、上記のとおり、会社更生法130条2項の範囲にとどまるのであって、その従業員と比較して、更生手続開始決定後に定年を迎える従業員の方をより厚く保護する必要性があるとは認められない。
 この点に関する相手方の主張は、採用することができない。
4 以上検討したところによれば、本件において、相手方の抗告人に対する退職手当請求権は、会社更生法127条の規定により共益債権とされる退職手当請求権には当たらないと解するのが相当であるから、同法130条2項が適用され、相手方の退職前6月間の給料の総額に相当する額又はその退職手当の額の3分の1に相当する額のいずれか多い額が共益債権となる。
 そして、前提事実及び甲14によれば、相手方の退職前6月間の給料の総額に相当する額よりも、相手方の退職手当の額の3分の1に相当する709万9182円の方が多いと認められるから、709万9182円が共益債権となるところ、この709万9182円は、既に相手方に支給済みである。
 そうすると、相手方の退職手当請求権の残額1419万8363円は、共益債権には当たらず、民法306条2号、同法308条、会社更生法168条1項2号により、優先的更生債権として扱われるべきものであって、これを共益債権たる被担保債権としてされた本件債権差押命令は、その手続に瑕疵があるから、取消しを免れない。
第4 結論
 よって、本件申立ては理由がないから却下すべきであり、これと異なる原決定は相当でなく、本件執行抗告は理由があるから、原決定を取消し、本件申立てを却下することとする。
なお、不当解雇(リストラ)についてお悩みの方は、専門家である不当解雇(リストラ)を扱う弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。