2009年5月22日金曜日

時間外勤務手当

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

(2)ア 原告は、平成四年四月一日から平成五年一二月七日までの間、日曜・祭日も休みなく日勤(午前八時から午後六時三〇分まで)と夜勤(午後六時三〇分から翌午前一〇時まで)とを少なくとも三日に一回づつ交替勤務した。
 これにより原告の勤務時間は、(ア)第一日目の日勤 実働九・五時間(休憩一時間を除く)
(イ)第二日目ないし第三日目の日勤及び夜勤 実働一四・五時間(休憩一時間を除く)
となった。
イ そこで、一ケ月(三〇日換算)単位の変形労働時間とみると、右(2)の勤務を三日ごとのサイクルで各一〇回づつ行うことになるので、原告の毎月の実労働時間は少なくとも二四〇時間となる。(九・五+一四・五)×一〇=二四〇時間
ウ 他方、法定労働時間が週四六時間、一ケ月平均四・三四五週とすると、一年間の一月平均法定労働時間は、一九九・八八時間となる。
 そうすると、原告の一ケ月の時間外労働(残業)時間は、四〇・一二時間となり(二四〇-一九九・八八=四〇・一二時間)、深夜労働(残業)は、七〇時間となる(午後一〇時から午前五時まで七時間×一〇回=七〇時間)。
エ さらに、原告の月五〇万円の給料を法定労働時間(一九九・八八時間)で割ると、一時間当たりの賃金は、二五〇一・五円である。
五〇〇〇〇〇/一九九・八八=二五〇一・五円
オ よって、以下の金員が未払いの残業手当(残業代)金(二〇ケ月分)として存在する。
(ア)時間外手当(残業代)金 二五〇万九〇〇四円
四〇・一二×二五〇一・五×一・二五×二〇=二五〇九〇〇四円
(イ)深夜手当(残業代)金 八七万五五二五円
七〇×二五〇一・五×一・二五×二〇=八七五五二五円
(3)したがって、未払賃金額は、右(1)、(2)を合計した九四五万〇五二九円となる。
(二)被告 原告の主張は、否認ないし争う。原告と被告との間に労働契約が成立していない以上、原告は被告に対し未払賃金を請求する権利がない。
第三 争点に対する判断
一 本件全証拠によるも、原告と被告との間に労働契約が成立したとの事実を認めるに足りる十分な証拠は存在しない。すなわち、
1 原告は、平成三年三月九日ころから、三度にわたり被告病院の事務長と名乗る小松原の面接を受けた上、遅くとも平成三年三月一五日には被告病院の看護補助者として原告主張に係る契約条件で勤務することになった旨主張し、原告本人も同旨の供述をする。
 この点、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、小松原が原告と面談し、原告の付添婦としての経験の有無や付添婦の条件等につき原告との間で会話を交わした事実は認められるが、他方、証拠(略)によれば、右小松原が被告病院の事務職員に過ぎず、同人が労働契約を締結する権限まで有していなかったこと、小松原としては原告が付添婦となることを希望して、たまたま直接被告病院へ足を運んだことから、原告からの質問に対し、被告病院に勤務する者として、権限はないものの、知っている範囲で、事実上の応答をし、立ち話として、原告と前記の会話を交わした他に、付添婦となるには、三国紹介所を介する必要があるなどと答えたに過ぎないと認められることなどにかんがみれば、右は、採用のための面接というには程遠いものであって、単なる立ち話というべきものであるというべきであるから、右面談が実施されたとの事実から直ちに原告主張の労働契約締結の事実が推認されるものではない。その余の原告主張事実(採用面接の事実、契約条件など)については、本件全証拠によるも、これを認めるに足りる的確な証拠(原告主張の契約条件によれば、原告は、同時に多くの患者の付添看護に従事することにより、破格ともいえる高額の賃金を受給することが可能となるが、被告としては、他の多くの付添婦の存在を無視して、ひとり原告とのみ、かかる破格にして、特例ともいえる内容の労働契約を締結すべき理由は全くない。また、小松原がかかる内容の労働契約を締結する権限を有していたとは到底考え難いといえる。しかも、原告と被告との間にかかる内容の労働契約が成立したのであれば、これを明記した契約書などが存して当然であるのに、かかる事実もない)は存在せず、原告の前記供述は到底採用することができない。この点、原告は、従前、訴外松崎病院で、直接病院と交渉した上、看護補助者として雇用された経験を有していたことから、病院と直接交渉した本件でも右と同様に雇用関係を形成する意思であった旨主張するが、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、平成三年ないし四年当時、原告は、それまでの付添婦の経験等から、右時期に基準看護を実施していない私立病院で特定患者の付添看護担当者(付添婦)を職員として雇っている病院は存在しないとの認識だったこと(右当時、原告は、同僚の付添婦らとの会話等を通じて被告病院が基準看護を実施していない私立病院であることを知っていたこと)が認められ、これらの事実に前記認定事実を総合すれば、特定患者の付添をしていた原告が被告との間で真実雇用関係形成の意思を有していたかについては大いに疑問があり、原告の右主張はにわかに採用できない。そもそも、原告の主張のとおり原告が被告の職員である看護補助者として採用されたとすると、多数ある付添婦のうち、ひとり原告のみが他の付添婦とは地位及び待遇面で異なっていたことになるが、かかることは、他の付添婦との仕事内容の同一性、被告病院の経営及び人事管理上の施策の一貫性からみて、不自然であって、到底肯認することはできない(仮に、原告の主張を前提としても、例えば、書証略によれば、被告に雇用される看護補助者と原告との間で給与支払方法及び各種控除等が異なる結果となり、これまた不合理な結果となる)

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