2009年4月25日土曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

13 平成五年一二月七日の出来事について
(一)原告
 平成五年一二月七日午後二時三〇分ころ、被告病院に入院中の患者が小遣いが足りないと言って、何度も病院事務室に福祉給付金を取りにきていた。すると、被告は、これを嫌がり、アルバイトの看護婦に事情を聞いても分からないので、原告が呼ばれた。被告は、原告に対し、「患者に薬を飲ましとんのか、何故きちっと薬を飲ませて寝かせとかんのか」などと怒鳴り、右患者が病院内を歩き回るのは原告が同人に薬をちゃんと飲ませて眠らせておかないからだとばかり原告を責めたてた。そこで、原告は、「患者さんは、病院が小遣いをくれないから、どうなっているのか聞きにきているのでしょう」「それに、私は担当でもありませんし、私ら看護補助者が勝手に診察室に入って薬を飲ませていいのですか」と答えると、被告は、突然「お前は、ワシに楯つくのか」「クビだ、もう帰れ」と怒鳴りまくり、一方的に解雇の意思表示をした。その際、同僚の上山つな子が「浅井さんは、内藤という患者の担当ではなく、薬を飲ませたかどうか関係ないのに気の毒ですよ」と言ったため、被告が「お前もワシに楯つくのか」と怒って、同女も原告とともに翌日円生病院への配転命令を強行された。右は、いずれも、被告が原告を従業員と認識していたことの証左である。
(二)被告
 付添婦の患者に対する態度が悪いと、患者の病状に影響があるので、病院としては患者の後見的立場から、付添婦に対して注意等をすることがある。右当日も、被告が病院二階の看護婦ら全員を集めて、患者に対する扱いを親切、丁寧にするように注意をしただけである。そもそも、被告と原告は、雇用契約関係に立たないのであるから、被告が原告に対してクビ等の発言をするはずがないし、原告は、右患者の担当者でないから原告を責めることもあり得ない。
 三国紹介所が原告と上山つな子の両名に対し、円生病院の患者の付添として派遣交替するように勧告したことはある。ただし、その際、上山つな子は原告に一緒に円生病院へ行こうと言ったが、原告は、病気で行けないなどと言って、被告病院の患者付添にも出てこなかったものである。
14 原告と三国紹介所との関係について
(一)原告
 原告は、三国紹介所とは全く無関係である(原告は、三国紹介所の場所も知らず、同紹介所に行ったこともないし、その折り込みチラシに基づいて応募したり、同紹介所に履歴書を提出したこともない。同紹介所から聴取手続をされたことも、求職表の作成を依頼したこともないし、被告病院を紹介されたり、派遣されたこともない。同紹介所に入会手続をとったこともない)。
(二)被告
 原告は、三国紹介所の責任者である杉本愛子の面接を受け、同紹介所に履歴書を提出し、被告病院患者宛の紹介状が被告病院へ授受された結果、同紹介所から派遣付添婦として稼働していたものである。
15 未払賃金請求権について
(一)原告
(1)以上のとおり、原告と被告との間に労働契約が成立したものであるところ、原告は、平成四年四月一六日から、少なくとも三日に一回づつの夜勤を命ぜられて五人以上の入院患者の付添看護に従事し、これにより毎月少なくとも基本給五〇万円の支払を受けることができたにもかかわらず、被告は、毎月二〇万円しか支払をしない。したがって、原告は、被告に対し、未払賃金として下記金員の支払を求めることができる。
ア 五四五万円(平成四年四月一六日から平成五年一〇月三一日まで一八ケ月半の期間、一月三〇万円として五五五万円のうち、平成四年七月分のみ三〇万円を支払ったので、右金額から一〇万円を控除した額が未払分)
三〇〇〇〇〇×一八・五-一〇〇〇〇〇=五四五〇〇〇〇円
イ 六一万六六六六円(平成五年一一月一日から同年一二月七日付けで解雇されるまでの間の未払賃金)
五〇〇〇〇〇×三七/三〇=六一六〇〇〇円
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。