2009年2月12日木曜日

時間外勤務手当

今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

2 勤務条件の決定及び原告と患者との関係について
(一)原告
 被告病院での勤務条件は、すべて被告が決定しており、原告が個々の患者との間で協議・合意をする余地はなかった。勤務条件につき被告がすべてを決定していたという事実は、原被告間の支配・従属関係を如実に示しており、それはとりも直さず、原被告間に労働契約関係が存したことの証左である。なお、平成四年六月中旬ころ、原告が小松原に対し、賃金支払額が前記1(一)(3)の約定と異なる旨抗議したところ、同年七月には原告主張に沿った額が支払われたという事実がある。右事実からも被告が原告の労働条件を支配・決定していたこと(すなわち、原告が被告に雇用されていたこと)は明白である。 
 原告は、被告との間で労働契約を締結したものであり、個々の患者との間で直接契約関係に立つものではない。
(二)被告
 被告病院では、新規の付添婦が入院患者の世話をする場合、事前に三国紹介所を介して、付添料や勤務時間等を説明しその内容について了解を得てから、個々の患者との間で個別に契約を締結した(当時、基準看護をとっていない私立病院が一般にそうであったように、付添婦は、個々の患者と直接契約関係に立つものであり、病院と労働契約関係に立つものではない)上、付添看護をしてもらっている。患者やその家族が自らの判断で最適条件の付添婦を選定することは困難であるため、被告病院が患者・家族に対するサービスとして、右のような取扱いをしているだけである。重篤な患者がいない被告病院においては、勤務条件にほとんど偏りがないため、右のような一律の取扱いをしても、結果的には同一条件下で同一の付添料が支払われることに変わりはない。むしろ、右取扱いにより、全ての付添婦につき統一歩調をとることが可能となり合理的である。
 したがって、被告の右関与が原被告間の労働契約関係の存在を示すものとはいえない。また、原告が小松原に抗議した事実及び右抗議に応じて付添料が支払われたとの事実は存在しない。
3 付添婦の朝礼への参加について
(一)原告
 被告病院では、他の従業員とともに付添婦も必ず朝礼に参加させられ、そこで被告から勤務上の指示、命令を受けていた。
(二)被告
 朝礼には、付添婦を含め参加できる者は皆参加するのが長年の習慣になっていたものであり、実際上も、付添婦に対する事務連絡や患者に対するサービス等の心掛けの話をしておく必要があった。朝礼への参加の意義は右限度にとどまり、原被告間の労働契約の存在と結びつくものではない。
4 タイムレコーダーの設置について
(一)原告
 被告病院の四階には、被告によりタイムレコーダーが設置されており、前記1(一)(5)記載の勤務時間に従い、付添婦の出勤状況を管理していた。現に、毎朝の朝礼では、小松原がそのタイムカードを見ながら点呼をとっていた。
(二)被告
 右タイムレコーダーは、三国紹介所の設置・管理に係るものである。毎月三国紹介所が付添料の計算に利用するため、被告病院内に設置されているに過ぎず、被告病院と直接の関係はない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。