2009年1月22日木曜日

残業代請求

今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

第二 事案の概要
 本件は、被告病院内で付添婦として働いていた原告が被告との間に労働契約が成立したとして、労働契約上の地位確認及び未払賃金等を請求した事案である。
一 当事者間に争いのない事実ないし証拠上容易に認定できる事実
1 被告は、大阪市住吉区(以下、略)の安田病院(以下「被告病院」という)を経営する医師である(争いがない)。
2 原告は、平成四年三月一六日から被告病院に入院する患者の付添婦として働いた(争いのない事実)。
 被告は、平成五年一二月七日、原告が被告病院の入院患者の付添看護をすることを拒否した(原告本人)。
 そのため、原告は、同日以降、被告病院において付添看護の仕事をしなくなった(原告本人、被告本人)。
3 三国看護婦家政婦紹介所(以下「三国紹介所」という)は、被告病院をはじめ、円生病院、大和川病院等に対し、看護婦や付添婦を紹介し、右看護婦等を紹介する際徴収する手数料収入で経営を維持していた。杉本愛子は、昭和六〇年一二月ころから平成五年一二月二八日までの間、右紹介所の責任者であった(人証略)。
二 争点
 原告と被告との間に労働契約が成立したか否か。
三 争点に関する当事者の主張
1 小松原信行との面接及び労働契約の締結について
(一)原告
 原告は、被告病院の付添婦が車イスに乗った入院患者を近所の公園まで連れてきているのを何度か見ていたため、被告病院では入院患者の付添婦を雇っているのではないかと思い、平成四年三月九日ころ、被告病院を訪れた。そのとき応対に出たのは、事務長と名乗る小松原信行(以下「小松原」という)であったが、同人が履歴書を要求したので、原告は一旦出直すこととし、同月一三日、再び被告病院を訪れた。その際、原告は、被告病院事務室で小松原の面接を受けて後記の労働条件を呈示された。その後、同月一五日に小松原から電話連絡があったので、原告が被告病院へ赴くと、小松原は、同月一六日から被告病院で働いてもらう旨指示し、原告はこれに応じて右一六日以降、被告病院の看護補助者としての職務に従事した(原告は、従前、訴外松崎病院で、直接病院と交渉した上、看護補助者として雇用された経験を有していたことから、病院と直接交渉した本件でも右と同様に労働契約を締結する意思であった)。したがって、少なくとも平成四年三月一三日ないし遅くとも同月一五日には、原告と被告との間で、以下の労働条件を内容とする労働契約が締結された。
(労働条件)
(1)業務内容 患者の付添看護
(2)契約期間 期間の定めなし
(3)賃金 一月目は、患者二人を付添看護をすれば二〇万円、二月目からは、患者が一人増えるごとに一〇万円加算する。
(4)支払日 毎月一五日
(5)勤務時間 通常午前八時から午後六時、四日ごとに一回夜勤(午後六時から翌朝午前一〇時)
(二)被告
 原告は、平成三年一月から平成四年三月まで大阪市阿倍野区(以下、略)にある付添婦紹介所である阪南会に在籍し同紹介所の紹介で病院患者の付添婦をしていたことのあるベテラン付添婦であったのであるから,基準看護をとっていない私立病院である被告病院が付添婦を雇用しないこと(当時、基準看護をとっていない私立病院では付添婦を雇用しないのが一般であった)を知らないはずはなく、また、被告病院の噂等も他の付添婦仲間を通じてある程度知っていたはずであるから、その点でも、被告病院が付添婦を雇用していると思ったとの原告の言い分は到底信用できない。また、小松原は、その当時病院の事務長ではなく、一介の事務職員に過ぎなかったのであるから、職員の採用等に関し何らの権限を有しておらず、したがって、採用権限を持たない同人が原告の採用面接をし、労働条件を提示するはずもない。もし、原告に対し何らかの面接がなされたとしても、それは原告を雇用するためではなく、病院が患者の後見的立場から付添婦としての適格性を審査するために過ぎない。
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