顧問弁護士(法律顧問)として、問い合わせを受けることの多いテーマを扱います。
今回は、昇進・昇格・降格についてです。
「昇進」とは、企業組織における役職や職位が上昇することをいいます(例:課長→部長)。
「昇格」とは、職能資格制度や職務等級制度において、その資格や等級を引き上げることをいいます(例:3等級→2等級)。
「降格」とは、昇進や昇格とは反対に、役職や職位を引き下げることや、職能資格制度や職務等級制度上の資格や等級を引き下げることをいいます(例:部長→課長、2等級→3等級)。
1.昇進に係る法規制
原則として、昇進・不昇進の判断は、使用者の裁量に委ねられています。ただし、以下のような差別的扱いは禁止されています。
・国籍、信条、社会的身分による差別(労働基準法3条)
・性別による差別(男女雇用機会均等法6条)
・通常労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別(パートタイム労働法8条)
・労働組合員に対する不当労働行為としての差別(労働組合法7条)
2.昇格に係る法規制
これも、以下のような差別的扱いは禁止されています。
・国籍、信条、社会的身分による差別(労働基準法3条)
・性別による差別(男女雇用機会均等法6条)
・通常労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別(パートタイム労働法8条)
・労働組合員に対する不当労働行為としての差別(労働組合法7条)
また、昇格・不昇格の決定は使用者の裁量が尊重されますが、著しく不合理で社会通念上許容できない判断で行われたという場合(評価の前提となった事実に誤認がある、動機が不当であるなど)でなければ、違法とはなりません。
なお、原則として労働者には昇格請求権までは認められませんが、昇格の差別が賃金の差別と同様の結果となるような場合は、昇格請求権が肯定される余地があります。このあたりの具体的な差は個別事情により区々ですので、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。
3.降格に係る法規制
①懲戒処分としての降格
これは、就業規則上の要件に該当するか否かが問題となり、懲戒権濫用の法理(労働契約法15条)が適用される余地があります。
②人事権行使としての降格
原則として、使用者は裁量的判断により人事権行使としての降格ができます。ただし、人事権の濫用とならないことが必要です(労働契約法3条5項)。
③職能資格引き下げとしての降格
労働者との合意により契約変更するか、就業規則等の労働契約上の根拠が必要です。なぜなら、職能資格制度の資格・等級の引き下げは、労働契約上当然に予定されているとはいえないからです。
また、労働契約上の根拠があったとしても、人事権の濫用とならないことが必要なのは当然です。
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